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ブルータスの悪夢。。。

朝、 ブルータスが起きてきて、血相変えて喋った日本語を文章にしてみる。

 

 

 

週末の午後、私は妻を車に乗せて、食材の買い出しに出かけた。

灰色の低い空、いつもより支度に時間をかけた妻には申し訳ないが、

朝から遠出になるくらいなら、週末の休息には、これくらいの空で有り難い。

いつもの渋滞が慢性化した先の信号を 、右に曲がれば目的地のはずが、

信号が青になっても、いっこうに先に進まない車の列。

横で景色を楽しみながら、鼻歌を歌う妻に、苛立ちを感じる。

ノロノロと進む車を押し分けるように、強引に割り入って交差点を曲がった。

近づいてくるように聞こえた微かなサイレンと、ハンドルを切る際に

左目の視界に入った人だかり。

「きっと事故ね」

妻の言葉には応えず、アクセルを踏み込んだ。

暫く進むと、民家も途絶えたその先に、目印無くとも遠目から目にとまる程の、

田園の中の、地域のごく一部の農家で運営された、アットホームな店が、

『通り最後の店』 といった感じに、車を吸い寄せる。

特別にラインで強制される事のない、モラルを重んじる駐車場の、

店から一番離れた場所に車を停めてエンジンを切る。

「あなたも、たまには一緒に行かない?」

行かない事を解った上での社交辞令の言葉を残し、私が軽く手を

挙げたのを確認すると、妻が車を降りる。

私はシートを倒し、ダッシュボードに両足を乗せて、妻の戻るのを待つ。

雲の切れ間から強く差す光、私は手を顔の前にかざす。

すると、その手を振り払って掴もうとする、黒い手が目の前にあった。

私は驚き、体を起こした。

閉めたはずの車の窓から、顔を覗かせて、老婆が立っている。

年の頃は七十過ぎたあたりであろうか、右手に籠を持ち、

一口に分けた果物のような物を、素手で私の口に押し込もうとする。

「結構です!」

 私の言葉が聞こえないのか、

笑いながら、見た事もない赤い何かを、潰すように掴んで、

赤い汁の滴るそれを、私の口に、強引に押し当ててくる。

徐々に、不愉快というより、恐怖に近い感覚が込み上げてくる。

我慢ならなくなった私は、運転席から助手席に逃げるように移り、車のドアを開け、

妻が居るはずの店の中へ、ドアも閉めずに飛び降りて駆け出した。

周囲から見れば、なんとブザマな姿であったに違いない。

立ち上がる事の出来ない、四つん這いの姿勢のまま、息を切らす

軟弱者の私に、買い物籠を下げた妻が駆け寄って来る。

「あなた、どうなさったの?」 

澄んだ目を丸くする妻の顔が、いつもの顔では無いような気がしたのは気のせいか……。

「い、今、妙な老婆が!」

「あなた、今日はね、とてもいいお肉があるんですって、今夜が楽しみね」

私の言葉を聞こうともせず、上からかぶせるように言葉を吐き出す妻の声が、

機械音のように聞こえたのは、私の耳鳴りのせいだろうか……。

立ち上がり、何も無かったように繕いながら、車の方に目をやると、

ドアは何事もなく閉まって見えた。

待つ間、うたた寝でも してしまったのだろうか、それにしてもリアルな幻想のようだった。

「あなた、この肉もいい肉よ、どっちがいいかしら?」

籠に入れたパック入りの肉を、両手に乗せて見比べ、悩む妻。

「どっちでも同じじゃないか? 早く戻ろう」

そう言う私に、強い眼差しを向ける妻。

「同じじゃないわ、これは二丁目の佐藤さんのお肉。 これは、その先の吉川さんのお肉よ!」

そう言って見せたパック詰めされた表示には、丁寧に、製造日やら製造者まで書かれている。

「これなんてね、今さっき事故死したばかりの竹内さんのお肉ですって!」

嬉しそうに笑って見せる妻が、私に差し出すパックの表示には、

『竹内○○さん49歳骨付き胸肉ミンチ』 と書かれていた…………。

 

 

 

 

「こんな夢見ちゃった、最悪! 忘れさせて~っ!!」

「大丈夫。ごはん食べれば忘れるわ。 で、その時の『妻』 は私だった?」

「違うよ、だって君、僕の妻じゃないじゃん?」

「だって君、妻、居ないじゃん?」

「だからさ、夢くらい、好きにさせてよ♫」

 

 

 

       夢の中の事は無意識なら仕方ない事だが、起きてからの悪夢はこれから始まる事に
           気づかず鼻歌歌うブルータスに「買い物に行こうか」 と誘う 天海 彩

 

 


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kenji0y


ラストは秀逸 (= ̄ω ̄=)ノ〇


by kenji0y (2014-07-16 22:33) 

ねこじたん

ぶるぅたすさんの夢 こわっ!
夢の中で 好きにしてるのに
忘れさせてって(笑
by ねこじたん (2014-07-17 08:10) 

sasasa

こ、恐い(>_<)
・・・と思ったら、最後でホッとしました(^_^;)
by sasasa (2014-07-21 11:20) 

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